これまで有川浩さんの作品が人気があるとは知っておりましたが、なかなか手が出ませんでした。数々の作品がドラマ化、アニメ化、映画化とメディアメックスで露出が急激に増えていらっしゃたので、作家読みすることにしました。集中的にデビュー作から読み込んでいます。本作は、有川浩さんが文壇?デビューされた作品で、ライトノベルなどとジャンル分けされていますが、設定の突飛さは別としてキャラクター設定と会話の面白さは、このデビュー作でも十分に感じられます。本作を含め初期の3作が自衛隊シーリーズと称されていますが、主人公の秋葉が陸上自衛隊航空隊を出自とするもので、自衛隊色はあまり濃いものではありませんね。各地に落ちてきた巨大な塩の結晶を見たものは次第に塩化が進み、いずれ塩の塊となるという切ない社会。無法へと向かう街で生き残るものは、愛する人々を塩化で失っていき、いつか自分もという絶望を感じつつ先延ばしに生きているという設定は、作品が選出された2003年にすでにこの国が不安と厭世が広がりつつあった事を思わずにはおれません。愛するものを守るがゆえに自らを捨てる覚悟というのはラブストーリーのひとつの定番でありますが、主人公のベタ甘感だけでなく硬派の男気を感じさせる主人公とペテン師のようなニセ基地司令の会話もなかなか面白い。その後の作品で際立つ会話の面白さの片鱗を見ることができるデビュー作だと思います。