名作と呼ぶにふさわしい作品だと思います。いつもながら人物像の表現の豊かさに加え、リアルな心情の動きの描き方がすばらしく、また展開も躍動感のある場面の移行が読み手を飽きさせません。作者の場合は人間の表現の根本に「悪」を置かない点が物語の流れを救いのある明るいものへと導く原動力となっているように感じます。少しずつ霧が晴れて行くような流れはともすると陳腐になりがちですが、それでも最後の展開は目をみはるものがありました。最後にわたしも救われた思いです。
余談ですが、TOYOTA問題との関連については、偶然なのか非常に気になりました。まさにタイムリーで戦慄を覚えました。