林業にゆる~くかける青春と自然を相手に生きる人々をユーモラスに描いた逸品。
主人公が、パソコン上に綴る日記の形式で書かれているから、ブログみたいなものだろう(ただし、環境はないから、インターネット上に、ではない)。
「勝手に」山村の林業会社に就職させられていた、人生に目的も目標ももたない若者(主人公)が、とまどい、反発しながらも、徐々に村の生活と林業に慣れていくという内容。もっとも、実際を考えると、わずか1年そこそこで「慣れた」というのは、いささか言い過ぎの気がするが、少なくとも小説の中では、主人公が村の人たちに受け入れられ、自らも村の一員という自覚が生まれたあたりで小説が終わる。
山仕事や村の生活には、かなりデフォルメされいる。さらに、十分に取材をした上で書かれているのであろうが、山仕事の説明に不十分な点も見受けられる。しかしながら、そんなことは些細なことである。さらに、話のスパイスのように付け加えられている、とある魅力的な女性と主人公の関係などは、文字どおり物語に彩りを添えているに過ぎない。
おそらく、この小説の真価は、実際のところ、通奏低音のように一貫して鳴り続ける、人々の山や自然に対する敬虔な気持ちではないだろうか。「神が去った」村?さにあらず、舞台の中には、到るところに「神」はいる。それが、村の人々の口癖、そしてタイトルの「なあなあ」に現れている。