第3巻は最終巻です。あらすじを書くとネタバレになってしまうので感想のみです。
完結して読み返してみると、この物語は「ロック」という一人のエスパーの「人物像」に焦点を当てたものだったのではないかと思います。
不老不死で不可能はないと言われていて、自分に向け牙を剥く敵と戦いたがらなかったり、戦いのさなかに手を抜く(と相手には感じられる)ロックが「傲慢」ではないかという事は、時折作中で登場人物に言われたりしてきました。
超人ロックが不老不死かという事に関しては、まずマトリクスの移し替えや若返りの能力があるため「不老」ではあると解釈できますが、「不死」かどうかに関してはまだ明確な結論は出ていないはずです。200年も生きられない普通の人間やエスパーにとって、自分が生まれる前から存在していて、数々の歴史上の事件にその名が登場するロックが「不死」に見えるのは確かです。
聖先生がこれまで描いてきた作品の範囲だけで判断する限り、西暦時代から宇宙歴1000年代にかけて少なくとも1500年は確実に生きています。
マエケナスの目的はロックを捕らえて「永遠の命」の秘密を探る事でした。その目的がレオノーラの「復讐」にすり替えられたわけですが、彼女は
「超人ロックを殺す事が物理的に可能だろうか」
という事をどこかで考えていたと思います。
でなければあそこまで用意周到な復讐計画にはならなかったでしょう。
そして「不可能はない」という伝説の方も、最終話でマインドハープの演奏の才能がないと、それを習った先生に言われていたという、少しほのぼのとした形で否定しています。
ロックが師事したオト・ペテルセンが出てくる『神童』(宇宙歴0995年)、現在絶版状態ですが、今刊行が進められている「完全版」の第37巻に採録される予定です。
また「情報過多の状態から本物を見抜く」という事に関して『聖者の涙』に通じる部分もあります。