ラフマニノフの2番はツィマーマン、リヒテル、アシュケナージなど数人の演奏を持っています。それぞれ特徴があるのですが、辻井さんのは「日本のラフマニノフ……」という感じでした。ちょっと前の演奏だからかもしれませんし、録音の調整もあるのかもですが……
ツィマーマンのは聴いていると金銀の細かいカケラが舞い散っているような感じで、フォルティシモがぐわっと来てピアノの部分は固めのタッチで繊細にきらきら……と聞こえます。アシュケナージの若いころの演奏は自分に酔いまくりで宝石箱をぶちまけたみたいな色彩豊かなロマンチックな音。酔いすぎ?でも素敵、みたいな。
で、辻井さんのは、聴いていたら頭の中に桜吹雪が散りました。満開の桜の森にいる気分。不思議ですが、きわめて日本的なラフマニノフという印象です。海外勢の演奏と辻井さんのでは、なんというか話されている言語が違うような気がしました。
具体的に言うと、たぶん体力的なパワーが少し足りないところがあるんだと思います。一楽章の途中や三楽章の盛り上がりなど、もっともっと、グワっと来て~!と物足りなく感じてしまうところがあるのです。オケに負け気味というか。半面、非常に優しく繊細な歌い方なので二楽章はすばらしいと感じました。二楽章が一番いいと感じたのは、私の持っている中ではこのCDだけです。
すばらしい演奏なのですが、終わってからツィマーマンとアシュケナージを聴きなおしてしまいました。ごめんなさい。
今後も辻井さんの演奏は進化するでしょうから、将来の録音が楽しみです。