描写がひたすら細かい。まるで、目で見たこと、あるいは感じたたことをもれなく書かなければならないかのようだ。理系の方の共通の性質のような気もするが、氏はまさにその典型(計算済み?)で、読者の脳内に息もつかせず情報がなだれ込んでくる。それが時に重く感じられる。いいかえればくどい。行間を読む作業が全くないので、おそらく教科書や試験問題に最もなりにくい作者のひとりだろう。
この作品では、設定を巧妙かつ少しずつ変えたストーリーが、氏おなじみの京都、しかもタイトルどおり学生下宿の四畳半を中心に、計4回繰り返される。さらにおなじみの登場人物や小ネタがが作中に散りばめられていることが、物語を多面的に浮かび上がらせるのに役立っている。逆にそれは、マンネリに陥る危険性をはらんでいるが、水戸黄門的偉大なるマンネリとなるか、つまならい内容になるかは、読者次第であろう。相変わらずの無茶苦茶な内容ではあるが、登場人物が真剣に生きている(それぞれの役割をこなしている)ので、私的には、読んでいて飽きない。