筆者が2度目の直木賞候補というタイミングもあってか、書店でも、雲を浮かべた青空に小さく白のタイトルが入る装丁のこの本が目立っている。
「中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、ひとをふたり殺した」という文句に惹かれて購入。
読み始めたところでは、イマドキの女子高生のモノローグにつきあうのに難儀したが、友達のなかではキャラを演じてみせるところや母親との関係など、人間関係の息苦しさが非常にリアルだ。
推理小説というジャンルに入っているけれども、謎解きが中心にあって、典型的なキャラクターが周囲を固めるといういわゆる量産型の推理小説とは、同じとはいえない。
むしろ1年のできごとを中学生の視点から描き、学校内とはかわった印象の謎のクラスメイトが登場するなどポプラ社なんかの、高学年から中学生向けのジュブナイル小説をもっと彫りを深くしたような印象だ。
殺人の描き方が重いので、他人に貸したりといった勧め方がしにくいのだけれど、読み応えのある一冊だった。