難しい。非常に難しいです、評価が。
端的な感想としては「これでチューリップとしてのラストアルバムでいいのか?」という気持ちです。
形態的には「2枚組みシングルカットなし」ということで過去のオリジナルアルバムでは『Someday Somewhere』のようですが、しかし、聴いて近い印象のものは『New Tune』かと思います。
これまでのチューリップの度々の再結成の中で過去の楽曲をやってきていましたが、このアルバムははっきりいって全てを白紙にして、今のメンバーで作り出す音に取り組んだのだと思います。
それぞれの楽曲については、いやいやさすがです。圧倒的に財津氏の作詞曲が多いのですが、上田さんの「Sunny」や姫野さんの「Rainbow」など、それぞれのPOPS感に基づいて「らしく」って好きです。いつまでも第一線でキャリアを積まれて来た財津氏の作品は、深みのあるものが多数です。
ですが、何か違うのです。
それは、メンバー間の絡みが感じられないこと。
第一期でみられたような財津&姫野のツインボーカル作品がないというようなことだけでなくって、演奏でも「本当にこの5人だからこそ出せた音なのか?」と思ってしまうのです。
特にDisc2は全曲財津氏の作詞曲。そこで他のメンバーのコーラスの絡みなどもほとんどない。「星空の伝言」で見せたようなメンバー間での複雑なハーモニーの形成がチューリップの魅力の一つだと思うのですが、本作の「君を抱き上げて」では、何で財津氏のコーラスの多重録音なの?それじゃ意味がない、と思うのは私だけだろうか。
また、同じくDisc2では、安部さんのGuitarや上田さんのDrumsが絵となって見えてこない。ライブで培ったバンドの「らしさ」が見えないのです。
もちろん「リクエスト・ベスト」に見られるように、財津氏のバラード曲は人気が高いです。そしてメンバーが表立たなくともしっかりと音を作り上げるのもまた、バンドであるかと思います。しかし、それでもなお、「ラストのオリジナルアルバム」として、これで落とし前がついたのだろうか? リスナーとしては疑問です。
繰り返しますが、楽曲そのものは非常に深く感じさせてくれるものがあります、ですが、特にDisc2は「チューリップ」ではなく「財津ソロ」としての作品にしか聴こえないのが、私としては残念なのです。