東京・新橋の花柳界に深い関わりを持つという筆者の履歴のためか、東京の「芸者さん」について、愛情を以て語られています。また、京都の舞子さんや芸子さんについての本はありますが、江戸芸者に関していうと、久々の書といえるでしょう。硬い出版社から出されていますが、研究書ではなく、江戸の芸者の歴史や風俗に関する読み物という観点から書かれているようで、たとえば「芸者」という呼び方は東京で、芸子という呼び方は京阪のものである、とか、芸妓というのは江戸の文人の好んだ漢文趣味による造語で、実際に「げいぎ」と呼ぶことはない、とか、花街は「かがい」と呼ぶべきで「はなまち」とは呼ばない、などの見識にあふれています。また、現在の東京芸者の世界をかいまみるのにも、おすすめの一書です。