いきなり主役の草薙剛と相手役の柴咲コウの二人が当然のように恋に落ちてしまい(危険時に感じる感情を、恋を勘違いする「吊り橋効果」というやつ?)、ありきたりのラブストーリーになるのかと思いきや、ラストには泣かされました。陳腐になる一歩手前で踏みとどまった見事な演出でした。
他にも政府専用機のあの結末はチョットと思っていましたが、東京大学地震研究所 「日本沈没」と地球科学に関するQ&Aコーナーで東大の先生が「客観性と再現性」をもって、様々な疑問に回答してくれてます(牽強付会な面もありますが)。
で細かいツッコミドコロが解消されると、やっぱりこの映画いいです。オリジナルのファンには許せない部分もあるでしょうが、オリジナルを十分意識し、リスペクトして踏襲したシーンも見事です(特典ディスク2の日本沈没と日本沈没にそのあたりが説明されています)。
で主役2人のほかにも、いろんな人が出ています。美咲役の福田麻由子はチョットカゲのある子役としては今考えられる一番のハマリ役。草薙のパートナーである及川光博にも泣かされました(奥さん役には佐藤江梨子)。田所博士役の豊川悦司熱演でした、大自然の前になすすべもない人間の無力さと、それでも奇跡を信じる希望を見事に見せつけてくれました。特別出演の石坂浩二もチョット小泉前首相を意識したメークがご愛敬、国難に苦悩する総理をいい感じで演じてました。他には、木村多江、庵野秀明や安野モヨコも出てます(ほんのちょい役なのでDVDで探してみましょう)。
そして希望を感じさせるラストがいい。この映画は日本が負けた太平洋戦争を意識させられます。国難に対して桜が散るように死ぬことを良しとした人もいれば、屈辱に耐え生き残ることで、戦後の復興に人生を捧げた人もいます。どちらもこの国を愛していたからこそ、そして愛する人や家族のために、その道を選んだのだと。
この映画では無残に引き裂かれ、沈んでいく運命の日本列島ですが、以前出張で羽田から富山まで飛行機で行った冬に、朝と言うにはチョット遅い午前中の浅い日差しに照らされた、雪を頂く日本アルプスなどの山々が素晴らしく美しかったのを思い出しました。国土を愛するとはこういう気持ちなのでしょう。日本列島はこの映画でカゲの主役として様々なドラマを魅せてくれました。