ファミレスで、当てもなく夜の時間をつぶす少女、少女に声をかける一人の男、少女に助けを求めるラブホのマネージャ(元女子プロレスラー)、ラブホで起こるトラブルとその関係者・・・都会の夜で起こる一夜の出来事が静かに語られる。
眠り続ける少女の姉とそのまわりで起こる不思議な出来事が物語に不思議な雰囲気を添える。
実体を持たず宇宙をさまよう「私たち」という"視点"が紡ぎ出す不思議な物語である。
何も解決しないが、ある種の救いを暗示して物語は終わる。
最近の村上春樹は大作が多いので敬遠していたのだが、この本はコンパクトなので久しぶりに手にしてみた。面白い。春樹文学のメインストリームから言えば「ノルウェーの森」、「世界の終わり・・・」と同じ支流に属するのだろうが、村上
春樹作品らしい魅力に溢れている。