登場人物がみんな健全ですね。
あまりひねたところが見られず、少し高いところからモノを見る目線を持っているのは、進学校の生徒達独特の雰囲気かもしれません。
このような伝統的な行事をやっているということは、藩校から続いているような伝統を持っている、公立トップのナンバースクールなのだろう。
わざわざ、そんなことは書いていないが、生徒達の言動からも、それを意識できるのは、取材と設定がちゃんとできているということなのだろう。
と言うより、ちょっと調べてみましたが、作者の母校、茨城県立水戸第一高等学校の「歩く会」そのままですね。
私としては、主人公の西脇融の「とにかく早く、高校時代を駆け抜けて、大学生になりたい」という思いと、全く同じ気持ちで高校時代をすごしてきたので、特に思い入れ深く読み進むことができた。
たった二日間の話だが、主人公2人はもちろん、周囲の生徒それぞれのストーリーもうまく挿入されています。最初から続く、ひとつの伏線・仕掛けも、うまく機能していると思います。
ドラマチックな展開はありませんが、生徒達が、それぞれの思いを持ち、交錯させながら、淡々と歩き続ける様子が、歩行会の空気をリアルに伝えてくれます。
ちょっと残念なのが、完全に悪役(ちょっとニュアンスは違うけど)としてだけ登場する内堀亮子の存在。
彼女だけは、ほんとうに邪魔をするだけの役回りでしかないのだが、きっと、彼女は彼女なりのストーリーがあるはずだと思いました。