ローマの壮大な歴史が詳細に、時系列に書かれていて、大変有益な本です。ただ、あまり明確な根拠がない著者の思い込みが断定的に書かれているところがあり、鼻につく部分がないでもありません。例えば、この巻だったか、カエサルに惚れた女性たちの気持ちが自分(著者)は女性だからよくわかる、よって、大多数の男性の歴史学者には分からないことが自分には分かると書かれているところがありましたが、その理屈が成立つなら、男性であるカエサルのことは、男性の歴史学者のほうがよく理解でき、女性であるこの著者には理解できないことになってしまいます。自分の性別を盾に考えの正当性を主張するというのは、まっとうな歴史学者のすることではないと思われますが、この本はそういう本格的な学術書というよりは、著者が全てのしがらみを振り切って、好き勝手なことを書く、「おもしろ読み物」的要素があるのでしょう。しかし、そのような言い回しの違和感を許容して読めば、上記理由により、この本はかなり有益です。