インドとロシアのものは素晴らしかったですが、これは手放しで誉める気にはなれません。訳者が英語圏の児童文学を日本に紹介することの先駆者であり権威であるがため、元の民話や再話者よりも訳者の存在感が強くなっているのが不満の理由その1。地方訛の訳に、東北弁や江戸の下町言葉を混ぜたような「方言」を使っていることにも古臭さと違和感を覚えます(いわゆる標準語の容認発音の英語とそれ以外を日本語に置き換える良い代案はいまだに見つかっていないようですが)。理由その2は、ひらがなが多用され漢字の使用基準が明確でないため、大人の私が読むとストレスが大きいこと。語感や音感を優先していると分かる部分もありますが、低学年で学ぶ簡単な字がひらがなで、それなりに難しい字が漢字。ルビ振りのルールもいまひとつ不明瞭。前半に収録されているのは、起承転結がある物語というよりも歌のような面白みのある詩が多く、その点でも子供よりは大人でこの手のものが好きな人向けではないかと思います。とにかく私は、どのページをめくってもそこに石井桃子がいることが嫌でした(ただ、図書としてはきわめて良心的ですので最低でも星3つには値すると思います)。