書名にもなっている『黄色い本-ジャック・チボーという名の友人-』をはじめとする短編集です。主人公は卒業、就職を控えた女子高校生、実地子ちゃん。実地子ちゃんは『チボー家の人々』にはまって、夢中で読んでいます。その本の世界と、実地子ちゃんの日常が交差し、混じり合う描写が巧みで、この作品の特徴になっています。
実地子ちゃんのように、本の世界に入って登場人物たちと知り合いになったように感じる(というより、実際そうなったと言えると思いますが)ことは、読書に夢中になったことがある人なら誰でも経験があるでしょう。時間も空間も越えた世界の人々と出会い、語らえる。読書の醍醐味のひとつですよね。
他のレビュアーの方もおっしゃっているように、私も最後のお父さんの台詞にジーンときました。娘にこんなことを言ってあげられるお父さん、かっこいいです!
『るきさん』とは一味違った、奇妙で不思議な高野先生節が堪能できます。この本が気にいった方は、『絶対安全剃刀』や『棒がいっぽん』を読んでみてください。