江國さんの本は恋愛について書かれているものが多いですが、
この本は基本的には家族について書かれています。
そして他の本ではいつも主人公の女性は恋人にだけは心を開いて、
その中だけで優雅に泳いでいるような、そんな人でしたけど、
この本の主人公は恋人よりも家族の中だけで暮らしている、
そんな印象を受けました。
そして読んでいる私はその家族を覗いているというよりは全くの蚊帳の外で、
決してその家族や主人公の心に入っていけるような隙間がないような、
孤独な印象を受けました。それは私がその家族の一員ではないからだと思います。
家族の仲はとても良いけれど、家族以外の人には残酷なほどに関心がないのです。
これが江國さんの他の本に出てくる主人公のように、
自分と恋人と好きなものにのみ囲まれてまっすぐ生きているような人であれば、
私としては共感できるのですが、家族という単位になるとなぜか共感できないようです。
むしろ共感なんかよりも疎外感が浮き彫りにされてしまうような気がしました。
「よその家」を覗くことはおもしろいと江國さんは書いていましたけど、
私にとってそれは決しておもしろいとは言えませんでした。
ひょっとしたらこの家族の一員になれて一緒にお茶を飲んでほっとできる人もいるのかもしれません。
そういう人にとっては心温まる暖かい本だと思いますが、ただ、私にとってはそうではなかった。
眩しいほどに素敵な家族だと思ったけども、それゆえに残酷な本だと思いました。