久々に読む長編もようやく先が見えてきました。クライマックスへと向かう中、途中あたりから一気に読むペースがあがり引き込まれていきました。
最初の3分の2くらいまでは陸戦のクライマックス奉天会戦の死闘が描かれています。客観的・戦力的にみれば明らかに日本が不利なのですが、腐敗しきった専制君主国家体制の象徴ともいえる、自己の保身しか頭にないロシアの愚将(クロパトキン)の失策(あと一押し攻勢に出れば日本軍は総崩れなのに、なぜか退却する)によりなんとか六分四分で日本は勝利といえる潮時をつかむことができます。児玉も急遽戦地から日本に戻り、国力の限界でもうこれ以上の戦争続行(戦線拡大)は無理であり、いち早く講和を進め戦争を決着するよう大本営に働きかけに向かいます。日本はアメリカに仲介を求め、後のポーツマス条約へとつながる米大統領ルーズベルトが登場、交渉初期段階の内情も描かれています。ルーズベルトは当初から達観していて、専制君主国家体制のロシアが負けこの戦争は日本が勝つと読みきっていました。
残り3分の1くらいからはいよいよバルチック艦隊との海戦がせまっていく緊迫した状況が描かれていきます。途中、地中海ルートできた旧式船団の別働隊とも合流し、バルチック艦隊はさらに大艦隊になりました。しかし、その司令官ロジェストウェンスキーは合流後もろくに戦略上の軍議をするでもなく、信じられない愚挙の連続で、この保身主義の司令官の相変わらずの無能ぶりも引き続き描かれています。