秦の滅亡から漢が起こる(後の漢の初代皇帝の高祖(劉邦)が楚王の項羽を滅ぼす)までが描かれた作品です。項羽の死が紀元前202年とのことですから中国ではこんな大昔からこのような戦国絵巻が展開されていたんですね。
多くの個性豊かな人物が現れ、どんどん引き込まれていきます。下巻は韓信の台頭、武力では常に勝っていたが結局消耗戦によりじり貧になる項羽(楚軍)、四面楚歌、項羽の最期という流れです。最後、項羽の死(史実でいえば垓下の戦い)で終わっているのがちょっとあっけなく少々尻切れとんぼの感があります。中巻の途中あたりから一気に読むペースが上がっていきました。中巻が一番内容的にも盛り上がりおもしろかったです。
天才武人である項羽と取り立てて際立った能力はないがどこか憎めず人を引き付ける魅力のある劉邦を中心とする人間模様により、リーダーたる人の上に立つ人間に求められる『徳』とは何か?『人望』とは何か?が描かれています。
漢の初代皇帝が農民の家の出の、俗な言い方をすればやくざあがりともいえるような人だったとは知らなかったです。出自からの類まれな出世ということでは中国版の豊臣秀吉みたいですね。
有名な故事(成語)、『四面楚歌』、『背水の陣』、『鴻門の会』等はここからきています。