作者がチェーザレは何も語らないと冒頭で書いている通り、彼の内面は書かれず背景、行動と結果の物語です。飽きずに読破しましたが読み終わったあと余韻が残らず物足りなさを感じました。
小国に分かれ陰謀寝返り裏切りに満ちたイタリア、イタリアの覇権を狙う神聖ローマ皇帝、フランス、スペインの野望、教皇の庶子として教皇領を復活支配するためにフランス、傭兵を利用し冷酷に行動するチェーザレの人生を美的に表現した小説です。
陰謀寝返りの中、チェーザレが冷酷にみえる行動をとるのは時代的にも仕方のないことかもしれません。
教皇は信仰より政治、外交が重要な任務であり、清貧とはかけ離れ同族を優遇し庶子とされますが子孫を残す事は黙認されている時代。
作者の敬愛するマキャアベリも登場します。
作者は〔わが友マキャアベリ〕においてチェーザレ・ボルジアについてはこの本以上のものは書けないのでこの本を読んで欲しいと筆を投げています。
作者の主人公への思い入れが強すぎる場合読み手は作者の深い思いに共感するか、冷めるかどちらかでしょう。この本は飽きずに読めますが好き嫌いの分かれる作者だと思います。