値段と造りのバランスが優れており、道具として見た場合とても良い商品だと感じました。実際に使ってみたところ、取って出しでペットボトルの押切りができるぐらいの切れ味でした。刀身はスカンジ型で余り立たせすぎないセカンドベベル(刃)が付いています。角度を攻めていないので取って出しでは刃先は欠けにくいかなという印象です。アゴ寄りについている鋸刃は便利で小枝の切断に使えます。背のガットフックと呼ばれるロープ切りは刃が付いておらず、また自身で付けることも難しいので使うことはまず無いと思います。
柄の部分はやや細身で独特です。私の場合はロング手袋をしながらの藪漕ぎでも不安無く振ることができましたが、手が大きく指が長めの人には向かないかもしれません。アウトドアでのバトニングについては柄から刃先まで190mmに対して刃厚が3mmと薄めで、かつ背に大口の面取りがあり平らな面が1mm程度しかありません。なので打ち込み難く、できないことはありませんが割りやすい薪を選ぶ必要が思います。ハンティング用としては柄や背に親指や人差し指の添えや支えの自由度がないので、持ち替えに難があり不向きかと思います。
メンテについては、ステンレスということで真水洗いと乾拭きで楽に済ませることができます。また、そこまで硬くないので砥石での砥ぎ直しも難しくありませんでした。Sモデルは通常モデルよりも材料の炭素量が多いので刃持ちの良さ、焼き入れの深さに期待して決めました。ケースは賛否ありそうですが、安価な革製に比べれば破けや貫通の恐れが少ない樹脂製で安心しています。歩いた時にカラカラと鳴る音は台所スポンジをケースの先に入れることで改善されました。
総じて藪漕ぎをしたり、地面に突き刺してピッケル代わりに使うなど、刃欠けや曲がりが想定されるような使い方をする人にはピッタリな道具だと思います。焼きはしっかり入っていそうなので、遠慮せず砥げるのも好感が持てます。山歩きに特化したまさに陸の刀だと思います。