この作品を読むにあたっては、読者のもつさまざまな知識の有無が面白さを左右する。
ただの異世界冒険ミリタリ小説として十分面白い。面白いのだが、ふりかけられたスパイスに気がつくと、さらに面白いのだ。
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どのような小説でも、著者と読者の興味嗜好が合致した場合に、そしてそれを読ませるに足る筆致で表現された場合に限り、
えもいわれぬ一体感(もしくは「埋蔵金掘り当てちゃいました」という達成感)が感じられるものだが、
読者がいままでどのような小説、漫画、映画、その他文物に多く触れてきたかによって、
得られる面白さがここまで変わる作品も珍しい。
それほどまでに、著者が触れ、感化された組織や物、作品へのオマージュというか、パロディというか、
使ってみたかったから使っちゃったというか、そういうものがさりげなく(?)ちりばめられている。
気がついた人はニヤッとし、気づけなかった者はただのおもしろい言い回し、キャラクターと感じるだろう。
そう、知らなくても、わからなくても十分面白く、かっこよく、劇的に描かれているのだ。
が、気がついた者は、そこでふれられた元の作品世界をもまざまざと思い出す描き方に、この物語世界が数倍に膨らむ。
ある意味とてもずるい手法だが、それをなしえる文章力がある。
読みながら脳内再生されるかつて見たキャラの動き、軽妙な掛け合い、BGM・・・やっぱりずるいわ。
そして、隠し味になっている作品はどれも名作、ではあるのだが、
最近の青少年はまずふれたことがないであろうものばかり。TVでも昔の映画、やらなくなっちゃったしね。
最近本作のさわりがTVアニメ化されたものをネット配信で、視聴者コメントつきで見たが、
上記のような仕掛けがわかった者とわからなかった者の温度差が激しく、
つくづく「あぁ、わからない子が多いのか、もったいない」と思ったものである。
まぁ、わかった人ってのは、おそらく40代も半ばかと。いったいターゲットはどの年齢層なんだ。
注文番号:285657-20151007-106040267