本書では、以下のような主張が行われる。
1 日本全国の各地方では、「モータリゼーション」と「グローバリゼーション」のため、人々の活動領域、居住領域、民間投資などすべてにおいて「郊外化」が進展
2「大資本家」たちの、大型ショッピングセンターや郊外での宅地開発の推進。自動車会社は、郊外に住む各世帯に複数の自動車を保有させる。
3 地域の公共交通、経済、行政力の弱体化とそれに伴う人口流出
4 「モータリゼーション」「都市の郊外化」「地方の衰退」「グローバリゼーションの浸透」が強化しながら展開する最悪のスパイラルが、「四位一体」となって展開される=「広義のモータリゼーション」
5 「広義のモータリゼーション」の中で、人々は「クルマ依存」を深め、「私的なデメリット」を生じさせた。
「私的なデメリット」=肥満化、病気、家計負担、死んだり誰かを殺めたりするリスクの上昇、子どもの傲慢化と攻撃性の獲得、地元や故郷の疲弊と地域社会からの隔絶
→地方では、人々はクルマによる「便利さ」を享受する一方、自らの限られた所得を自動車会社、大型ショッピングセンター、住宅デベロッパーという大資本に吸い上げられ、肥満、病気、交通事故、傲慢な子どもというリスクを甘受し、地方は弱体化し、地域社会から隔絶された不幸な存在となった。
それゆえ、クルマに頼らないことで地方は蘇るという。
そのためには、
1クルマが入る領域とそうでない領域を明確に分け、その両領域の「接続」を円滑化する必要がある。
そのためには、
(1)町の中心部からクルマを排除し、その周辺部に環状道路や大型駐車場を整備する
(2)町の中心部からクルマを排除するために、流入規制をする
2 人々が「クルマに頼りすぎない暮らし」をする。クルマでなくてもいい移動もある。
3 地方政府や地方社会は、一つひとつの交通まちづくりを最大の戦略性をもって展開し、中央政府は徹底的にバックア
ップする。都市間の交通インフラの整備、公共的、長期的利益の増進のためのビジネス展開、毎日の賢い暮らし。
を意識すればいいと主張する。
本書のこのような主張は斬新で新たな視点である。一方、この主張のために、本書では多くの統計が使われるが、この統計の使い方が恣意的に感じられ、筆者の主張が結果として正しいか疑問である。