著者の作品は、硬派な小説から軽いエッセイまでそれなりに読んでいましたが、この自伝的エッセイは、恐らく自分の娘世代や今の若者に向けた先達としての本音が詰まっていて、筆致も、分かりやすく語りかけるような読みやすい本です。
でも、中身は、結構痛烈。過去の自分の同僚やその他巷で話題の生活スタイルなどを「一流」「二流」「三流」と容赦なく分類しています。でも、現状に甘んじず、貪欲に自分の可能性を超えて努力しないと、中途半端で不満の残る冴えない人生になってしまう、というメッセージを、ショック療法的な切迫性をもって次の世代に伝えようという熱意の表れかと思います。
あと、終わりのほうで、なかなか他の著作からは窺われない、家族への思いや子供との関係などが垣間見えるのもよいです。
そして、今や著者が文化人的な位置づけにあることにすっかり世間も慣れてしまっていますが、本書にここぞとばかり散りばめられている昔の写真が、ある種キワモノ的でもあった著者のマスコミにおける姿を思い出させてくれ、本書で著者が伝えたかった「野心」の偉大さを感じさせてくれます。