例えばスクリーントーンの切り貼りで漫画を描く中野シズカさん等も凄いと感心するばかりなのですが、この、全ページ木版画で表現された一冊の漫画はもう、何と表現すれば良いのか……ただもう、一体どれだけの時間と手間がかかっているのか、そればかりに、私のような小心者は気を取られてしまって、物語やその世界に没頭出来ないという、本末転倒な有様が起こってしまう程。木版画の持つ温かみが、透明で詩的で物静かな、また時には残酷な世、それらの世界観を、昭和初期のような雰囲気でもって滔々と描き出しています。それはいわゆる「ガロ的」の典型とでもいうか。有名な芥川の『蜜柑』等も木版画で描かれております。何というか……やはり木版画はせめて絵本であるべきなのではないか、そんな思いがどうしても過ぎってしまい、-☆ひとつで申し訳ありませんが、漫画という表現媒体への挑戦という見方も出来るでしょうし、非常に怖ろしい一冊でもあるかとも思いました。圧巻です。