かの司馬遼太郎でさえ、日本の昭和史は著述できなかった。それは、日本の昭和史、特に、戦前、戦中の歴史を極東裁判史観が歪めたとも言えるし、明治までの日本人研究すればするほど、理解し難い面もあるからであろう。しかし、明治の日本人も、昭和の戦争時代の日本人も、戦後の日本人も、歴史の中に存在し続ける継続された日本人である。日本人は、あの欧米人が夢に見るローマ文明と同じく「寛容」を基本とする文明を作り上げた人間集団であり、さらに「侘び・寂び」まで昇華させ、その形式化を武士道として現在にまで面々と受け継いでいることに多いなる自信を持つべきである。寛容と侘び・寂びを結び付けることは、このレヴュー上では詳述できないが、「世界を号泣させた日本人」を読めば、その一端を垣間見ることができると、お薦めできるのである。