厳密に言えば、史世と貴彬の出会いのシーンが収録されているのはこの『甘いシリーズ』の第一作目であり妃川先生のデビュー作でもある「甘い口づけ」なのですが、そちらは史世が高校二年生のクリスマスのお話なので……
この本の最初に収録されているタイトル作品でもある「奪われる唇」は史世が中学一年生の貴彬と出会って間もない頃から、高校入学直後までのお話なので、こちらがこの二人の最初のお話だ、といってしまってもよいと思います。
まだ中学生だからか、史世、自分が庇護されるべき子供の年齢であることにかなりのコンプレックスを感じていて、子供らしく悩んだりもしています。
でも、最終的にはやっぱり史世のほうが貴彬よりも覚悟が決まっていて、最終的には史世のために分かれようとした貴彬をどやしつけて(?)逃げることを許さなかったという……
やっぱり、このシリーズで最強かつ、一番かっこいいのは史世で、それはまだ中学生の子供である頃から変わらなかったんだなぁ、と納得できるお話です(笑)
同時収録の「拘れる眸」は、史世が高校3年生のときのお話です。史世も大人に近づいて精神的にも余裕が出てきたせいか、その性格の女王様っぷりに磨きがかかっています(笑)この時点ですでに史世の言動を制することのできる人物が一人もいないのだから、この後のお話で史世の最強っぷりがエスカレートしていくのは当然と納得! でも、史世に振り回されている男たちはみんな、文句を言いつつもその状況を楽しんでいるようだと感じるのは私だけではないはず(笑)
リーフ出版さんから別々に出版されていたときにはなかった、「幕間」という短編も収録されています。「奪われる唇」と「拘れる眸」の間のお話で、史世が女王様の片鱗を見せはじめたお話(?)です。