「シナリオに文才は必要ない。しかしルールを知ることは必要だ」という主張の元、シナリオの由来、構造、物語の紀元や共通ルールなどに触れられています。全体的な印象として、講義用の教材っぽくて、同じようなことを何度も書いている感があります。
物語の書き方に関しては、プロットを作って、さらに細かくしてという流れです。
この本では物語のサンプルとして、シェークスピアのハムレットが用いられ、“ハムレットに当てはめるとこんな感じ”という説明の仕方で、物語の構成を分解していきます。
例えば、ショートプロットの段階では、(A:発端)何が、(B:展開)どうして、(C:結末)どうなる、(D:描写)どんな感じの話、というのを次のように書いています。
(A)王子ハムレットが亡霊に会い、(B)暗殺の秘密を知り復讐を誓い狂気を装うが、決闘に追い込まれ、(C)仕込まれた毒によって命を絶たれる、(D)という悲劇。
実際に、短めのプロットから徐々に長いプロットを書いていく流れで、物語を作る課題を工科大学の学生に課したところ、文章が苦手な学生でも書けたようです。
本のタイトルとなっている黄金則とは、多くの物語を調べたところ、その構成の仕方に共通点が見られ、その点を踏まえれば書きやすいという類のものです。
古くはギリシャ悲劇の三幕構成、日本の能における序破急、ロット(箱)の数の例ではウラジミール・プロップが提唱した31という説などを挙げています。
構成の他に、登場人物の種類分けをしています。プロップが7種類に分けたのを元に、よりわかりやすく、登場人物の役割として、主人公、協力者、敵対者、犠牲者、依頼者、援助者、対抗者としています。
このような感じで、分析して分類するという学問的見地から、創作というものを捉えていくわけですが、創作とは感性によって行われる芸術と捉えている学会では、相手にされていないようでした。
ただ、ハリウッドではシナリオの構築法が存在し、シナリオアナリストという存在がいて……と、日本とハリウッドの違いをあげ、より商業的に失敗を少なくし、観た人が満足感を得られるのは、どちらかという話を書かれています。
逆説的に言えば、多くの作品に見られる構成のセオリーを知ることで、それを意図的に外すことで「おっ」という新鮮な驚きを表現することも可能な訳です。