新渡戸稲造。読み方はもとより、何した人で、何でお札になったのか、よく分からないまま、樋口一葉に取って代わられてしまった、かつての5000円札の肖像。しかし、この人はまさに「太平洋の架け橋」であった。しかも戦前に、民族・文化・宗教の壁を越えた国際協調に尽力しようとした人であった。国際平和の実現、そして、わが国の抱える閉塞感の打破には何が必要か、時空を超えて教えてくれる。そもそも、表現こそ違うが、人間の倫理観に西洋も東洋もない、だからこそ謙虚に学び、誠実に生き、生まれて以来育んでくれた母国、家族、そしてともに生きる国内外の人々、そして自分自身を誇るべきである。彼はそう言いたかったのではないか。