よみがえり系の映画だが、全くの他人として現世に戻ってくるところがこの映画のミソ。椿山課長を伊東美咲を演じるなど、見た目とちぐはぐな行動がコミカルな笑いを誘う。そして死者の心残りが解消され、生きている間には気付くことのなかった人たちの本心を知り、様々な感情が喚起される。
椿山課長は中陰役所で目を覚ます。状況が読めないままマヤ(和久井にピッタリの配役で、たまにするお茶目な仕草がかわいい)の説明が始まり、自分が死んだことを理解する。そして現世にやり残したことがあれば、厳しい審査の上、現世に戻る(逆送)ことが可能であることを知る(スカイハイの裁きの門に似ていますが、復讐行為は禁止されてます)。
重大な真実を知らずに死んだことに同情した神様のおかげで、椿山は他の2名とともに初七日まで現世に戻ることになる。中陰役所で目を覚ました時点で4日間が経過しているため、残り3日間で重大な(辛くそして意外な)真実を探すことになる。
豪華な出演陣。主役はもちろん、伊東美咲と行動することになる志田未来は養父母や生みの親を探すが、その感情がよく表現できていた。残された子供である須賀健太は子役としては現時点で最高の配役。國村隼、市毛良枝のヤクザ夫婦も深みのある演技。成宮寛貴も昔ながらの任侠を漂わせた演技だった。余貴美子は泣かせてくれた。
特典映像では「おとぎばなしができるまで」と題したメイキングが志田未来のナビゲーションで紹介される。須賀健太が子供らしいヤンチャさで撮影現場を盛り上げる様子が微笑ましい。またこの話の発端となった中陰役所は浅田次郎の創作で、ある失敗から思いついている。免許の更新に1年間違って行ってしまったが、試験場に老若男女、職業など全く別々の人間が集まっている風景が印象に残って、この話を思いついたそうだ。
笑って泣けるエンターテインメントで、最後まで飽きさせない。ただ伊東美咲にはちょっと荷の重い役だったようで、西田敏行のオジサンらしさの表現がいまいち浅かったような気がする。伊東は一人前の役者になったが、人生の深みが表現できるまでにはもう少し勉強が必要かも。
また豪華キャストがそれぞれの役をきちんと演じて、観る側は各キャラを理解しやすい。キレイに盛り付けられた豪華な料理のようだが、素材の良さを完全に生かすまでは到達していない印象だったので☆5つまで後一歩の☆4つとした。