この間ディカプリオ氏の映画を見て原作の深い世界を知りたく購入しました。村上訳の評判が良い(世界観を反映しているとのこと)ので読んでみることにしました。最初,氏の小説のような口調ならどうしようと思ったのですが,翻訳は全く違うのですね。深い部分では繋がっていますが,フィッツジェラルドの世界に誘ってくれます。
<読後>
氏はあとがきで,100年以上前の物語だが,会話は現代におこっている臨場感が必要なので,登場人物が読者の友人として敵として存在するために可能なかぎり装飾を取り払ったと述べている。なるほど,と思った。また村上氏は最初と最後にとても気を使った,逆に言うと,ここを訳せる実力をつけるまで本書の翻訳には手と付けなかったと述べている。最後の段落は特に素敵だ。324頁。開発前のアイランドの様子から始まる風景描写をかりた米国人の哀切,自然を一定に後退させ,発展を選び,その価値観を幸福と呼び,そしてノスタルジーを創作しながら前に突き進む,かすかな,だが消えない精神の闇が良く描けており,ぞっとした。