言語を学ぶということは、その背景にある文化や認識を学ぶことである。
ここである女性言語学者がエイリアンと接触し、その言語を学ぶことになった。
ところが、過去・現在・未来とあくまで時間軸に沿った認識をする人類に対し(すなわちまだ見ぬ未来のことは知りえない)、エイリアンにとって過去・現在・未来は同時に認識する現象であった。言い換えれば、未来は既知であり、過去や現在はそこにいたるまでの過程にしかすぎないのである。
言語を学ぶことを通して、このエイリアンの認識を徐々に学んでいった女性言語学者に訪れるフラッシュバックならぬフラッシュフォワード。
一見、回顧録を思わせる語り口が、実は本物の未来を指すと悟ったときの衝撃は並大抵のものではない。
性交をし、子をなす前から、その子供の一生を知ってしまった母親である言語学者に、なんとも言いえぬ痛み・・・哀切を感じたのは、過去、現在、そして見知らぬ未来へと時間軸上を移動する「人類」に特有の感覚なのかもしれない。
彼女のいたった境地は、いわゆる悟りともいえるのかもしれない。
(表題作「あなたの人生の物語」によせて)