「蟹工船」は労働者搾取の実態を、「1928.3.15」は官憲による共産主義者・労働者の徹底弾圧の実態を記録したものである。
蟹工船は「航船」ではないので船舶法の適用を受けず、「工船」なので工場法の適用を受けない。したがって、安全基準以下の装備のボロ船で労働者を無定量無際限に働かせることができる。しかも、漁場はソ連領海ぎりぎりのカムチャッカ。駆逐艦の護衛が付くとはいえ、会社はやりたい放題である。そして、駆逐艦が護るものは、蟹工船ではなく、それを運営している資本家・財閥の利益である。労働者の団結は決して「赤化」による上からのものではなく、自己の生命維持のための必然であることがわかる。
1928年3月15日に田中義一内閣により、共産主義者の一斉検挙・徹底弾圧が行われた。この小説を北海道小樽におけるその弾圧の記録である。当たり前のように行われる残虐非道な拷問、拷問で死んでも記録上は「自殺」。取調べが終わると警察が被疑者を「接待」する。被疑者に裁判所で調書と違う事実を主張させないためである。人間がどこまで卑劣になれるか、その極限状態を描いている。最後は「日本共産党万歳」で終わっている。
民衆の旗赤旗は
戦士の屍を包む
しかばね固く冷えぬ間に
血潮は旗を染めぬ
高く立て赤旗を
その影に死を誓う
卑怯者去らば去れ
我らは赤旗守る