私が最初にLegereを買ったのは確か2000年で、もしかすると日本人としては一番早かったかもしれません。当時滞在していたシカゴの楽器店で見つけて店員に評判を聞くと、「シカゴ響のラリー・コームズが公開レッスンで使っていたよ」と言うので試しに買ってみたところ、十分使えるので練習用に重宝していました。その後楽器を吹かなくなり、最近、数年ぶりに引っ張り出して吹いてみるとLegere(硬さは3 1/2)が全然鳴りません。もしかすると、こういうものにも経年変化があるのかもしれません。そこで今回、シグネチャーの3 1/4を購入しました。以前のものと比較するのは難しいのですが、私のマウスピース(B45)に合っているようで、良く鳴ります。ただ、最高音のBやCは出すのが難しく、これはLegereだからなのか、もう少し厚い
ものを使うべきなのか分かりません。(私は普段Vandorenの3 1/2を使っていて、Legereのホームページのチャートによると、これは3 3/4ぐらいに相当するようです。)
ところで、Legereは合成リードとしてはとても優れていて、実際これを使ってCDを録音しているアーティストもいるとのことですが、私の経験では、やはり「良い」ケーンのリード(これがなかなかないのですが)にはかなわないように思います。まったくの私見ですが、これは素材が硬いとか柔らかいではなく、「均一すぎる」せいではないかと思っています。天然のケーンには、筋の部分と柔らかい部分があって、「腰」と言うか「切れのよさ」のようなものが感じられ、それが倍音構成やタンギングへの反応に影響を与えているような気がします。
2002年に、輸入の交渉をするため、カナダのトロント郊外にあるLegereの本社兼工場を訪問したことがあります。その当時はまだベンチャー企業の趣で、社員も少なく、数台のNCマシンを並べてリードを削っていました。面白いのは会社の看板がなかったことで、「余計な人に来てもらいたくないからだ」と言っていましたが、自分たちの製品に対する強い自信を感じることができました。その時「日本でも必ず売れる」と言った手前、今日Legereが日本で定着しているのを見るのはうれしい限りです。ひとつ残念なのは、当時から「もうすぐ出す」と言っていたダブルリードがいまだに出ていないことです。オーボエやファゴットの奏者はリード作りに膨大な時間を費やしていますから、これが出れば彼らにとって福音になると思います。